カブトムシ日記
昨年の夏、私の家に2匹のカブトムシがやってきました。当時、保育園の年長だった息子のために、もらってきたものでした。息子は、それぞれにワタル(オス)とブンちゃん(メス)という名前を付けて、とても大切に飼育していました。なぜ、ワタルかというと、飼育ケースの中に置いた止まり木をウゴウゴと渡り歩いていたからで、なぜブンちゃんかというと、飼育ケースの中でブンブン飛んでいたからでした。
振り返ること30年余り前、自分が子どもだった頃が思い出されました。小学生だった私は、カブトムシに心奪われ、夏休みの早朝に友達と連れ立って、「秘密の木」(誰にも教えていないカブトムシが樹液をもとめてたくさん集まる木)にカブトムシを取りに行ったものでした。
その頃は、取ってきたカブトムシのエサは、自分で食べ残したスイカなどでしたが、今は、「昆虫ゼリー」という栄養満点のエサが売っています。これを上げてみると、ワタルとブンちゃんはカブリつく様にして食べる(吸う?)のでした。
カブトムシの寿命というのは、成虫になってからは長くても3か月と言われているようです。ワタルとブンちゃんは、カブトムシとしては大変長寿で、結局、夏が過ぎ、すっかり冬が始まった11月に入るまで、飼育ケースの中で元気に動き回っていました。
11月になってしばらくした時に、飼育ケースの中で動かなくなっている2匹を見つけ、息子とともにお弔いをしました。その後、飼育ケースは掃除をして押し入れにしまおうかと考え、ふと飼育ケースの底を見ましたら、小さな小さな白色の「C」がいくつもありました。何だろうと思い、よくよく見てみると、それは丸くなっているカブトムシの幼虫でした。ワタルとブンちゃんが子孫を残していたのでした。
以後、家では、このワタルとブンちゃんの子供たちを大切に育てる日々が始まりました。飼育ケースは、子供たちのゆりかごとなり、もちろん押し入れにしまわれることはありませんでした。
息子がカブトムシの本を読んで私や妻に教えてくれたところでは、カブトムシの幼虫のご飯は「土」であり、飼育ケースの土は幼虫たちのゆりかごであるとともにご飯でもあるとのことでした。また、この「土」は近くの公園などからもってきてもよいのですが、「昆虫マット」というものがあると妻が調べてきました。昆虫マットとは、クヌギ等の木を粉のように細かく砕いて、それに乳酸菌や酵母を加えて発酵させたものです。これを土の代わりに飼育ケースに入れると、幼虫がグングン育つというではないですか。
さっそく近くのペットショップに行きましたところ、お米の袋の様なパッケージで、5キロがおよそ500円で売っていました。せっかくなので、我が家の幼虫にできるだけおいしいご飯を与え、心地よいゆりかごの中ですくすくと育ってもらいたいと思い、買ってみました。飼育ケースの中に昆虫マットを敷き詰めて幼虫たちを放ってみると、あっという間に昆虫マットの中にもぐっていきましたが、心地いい!と言っているような気がしました。その後、幼虫たちはむしゃむしゃと昆虫マットを食べて、大きくなっていきました。 当然、幼虫たちはフンをします。それを取り除いてあげなければなりません。小さな葉巻型のフンと昆虫マットを上手く選り分けるために、私はふるいを買ってきました。2週間に1回ほど、飼育ケースをひっくり返して昆虫マットをふるいにかけてみると、出るわ出るわで、山のようなフンが選り分けられました。それを捨てて、新しい昆虫マットを補充するということを繰り返すうちに、秋が来て、冬になり、また春が訪れました。
特段、昆虫が大好きというわけではない私、というよりも、幼虫系はむしろ大嫌いだった私。ところが、このような作業を繰り返しているうちに、大袈裟にいうと「愛おしさ」のようなものが芽生えてくるので驚きです。
昆虫マットの入れ替えがすっかり家事の一つとして定着した2月頃、気が付くと幼虫たちの体が次第に茶色を帯びてきました。これも息子が教えてくれたのですが、それはそろそろ幼虫がサナギになる兆候でした。さらにしばらくすると、幼虫は昆虫マットに潜ったまま、顔を出さなくなりました。飼育ケースをよく見てみると、幼虫が昆虫マットの奥底に、自分で部屋のようなもの(蛹室というようです)を作ってじっとしているのが見えました。その蛹室の中で幼虫は飴色の蛹になっていきました。あるサナギには角がありました。オスのカブトムシになることが分かります。こうなると、息子だけではなく、私も、いつ成虫になって出てくるのだろうとワクワクしてきました。
もっとも、幼虫が蛹になり、成虫になる過程はとてもデリケートな時期で、うっかり衝撃を与えてしまったり、触ったりすると死んでしまうとあります。昆虫マットの入れ替えもしてはいけない、と物の本に書いてありました。
そこで、そっとそぉーっと待つことになりました。
やがて、息子が小学校に入学しその世話で慌ただしくなりました。昆虫マットの入れ替えもしなくなったので、半ば幼虫たちのことは忘れかけていた4月の終わり、何やら飼育ケースの中で蠢くものがあるではありませんか!
おそるおそる蓋を開けてみると…、なんと!そこには立派なカブトムシがいるではありませんか!元気に動き回り、ぶんぶん飛び立とうとします。この感動に、私の脳裏には、中島みゆきの「誕生」が巡りました。
その後、次から次へとカブトムシが現れ、結局、オスが7匹、メスが9匹「誕生」したのでした。カブトムシ屋さんに転職しようかと思いました(笑)。
それから、再度、昆虫ゼリーをあげる日々が始まりました。
事務所の中には、やはり息子さんと一緒に幼虫を育てているご家庭があって、めでたく誕生したお互いのカブトムシを交換したりしました。
しかしながら、狭い飼育ケースの中から、広いところに出してあげたい。森の中で、仲間とともに存分に飛び回ってもらいたい。そう思っています。今週末、息子とともに、カブトムシを近くの森に離しに行こうと決めました。
さびしくはありません。なぜなら、飼育ケースの中には、既に次の子供たちが生まれているからです!


振り返ること30年余り前、自分が子どもだった頃が思い出されました。小学生だった私は、カブトムシに心奪われ、夏休みの早朝に友達と連れ立って、「秘密の木」(誰にも教えていないカブトムシが樹液をもとめてたくさん集まる木)にカブトムシを取りに行ったものでした。
その頃は、取ってきたカブトムシのエサは、自分で食べ残したスイカなどでしたが、今は、「昆虫ゼリー」という栄養満点のエサが売っています。これを上げてみると、ワタルとブンちゃんはカブリつく様にして食べる(吸う?)のでした。
カブトムシの寿命というのは、成虫になってからは長くても3か月と言われているようです。ワタルとブンちゃんは、カブトムシとしては大変長寿で、結局、夏が過ぎ、すっかり冬が始まった11月に入るまで、飼育ケースの中で元気に動き回っていました。
11月になってしばらくした時に、飼育ケースの中で動かなくなっている2匹を見つけ、息子とともにお弔いをしました。その後、飼育ケースは掃除をして押し入れにしまおうかと考え、ふと飼育ケースの底を見ましたら、小さな小さな白色の「C」がいくつもありました。何だろうと思い、よくよく見てみると、それは丸くなっているカブトムシの幼虫でした。ワタルとブンちゃんが子孫を残していたのでした。
以後、家では、このワタルとブンちゃんの子供たちを大切に育てる日々が始まりました。飼育ケースは、子供たちのゆりかごとなり、もちろん押し入れにしまわれることはありませんでした。
息子がカブトムシの本を読んで私や妻に教えてくれたところでは、カブトムシの幼虫のご飯は「土」であり、飼育ケースの土は幼虫たちのゆりかごであるとともにご飯でもあるとのことでした。また、この「土」は近くの公園などからもってきてもよいのですが、「昆虫マット」というものがあると妻が調べてきました。昆虫マットとは、クヌギ等の木を粉のように細かく砕いて、それに乳酸菌や酵母を加えて発酵させたものです。これを土の代わりに飼育ケースに入れると、幼虫がグングン育つというではないですか。
さっそく近くのペットショップに行きましたところ、お米の袋の様なパッケージで、5キロがおよそ500円で売っていました。せっかくなので、我が家の幼虫にできるだけおいしいご飯を与え、心地よいゆりかごの中ですくすくと育ってもらいたいと思い、買ってみました。飼育ケースの中に昆虫マットを敷き詰めて幼虫たちを放ってみると、あっという間に昆虫マットの中にもぐっていきましたが、心地いい!と言っているような気がしました。その後、幼虫たちはむしゃむしゃと昆虫マットを食べて、大きくなっていきました。 当然、幼虫たちはフンをします。それを取り除いてあげなければなりません。小さな葉巻型のフンと昆虫マットを上手く選り分けるために、私はふるいを買ってきました。2週間に1回ほど、飼育ケースをひっくり返して昆虫マットをふるいにかけてみると、出るわ出るわで、山のようなフンが選り分けられました。それを捨てて、新しい昆虫マットを補充するということを繰り返すうちに、秋が来て、冬になり、また春が訪れました。
特段、昆虫が大好きというわけではない私、というよりも、幼虫系はむしろ大嫌いだった私。ところが、このような作業を繰り返しているうちに、大袈裟にいうと「愛おしさ」のようなものが芽生えてくるので驚きです。
昆虫マットの入れ替えがすっかり家事の一つとして定着した2月頃、気が付くと幼虫たちの体が次第に茶色を帯びてきました。これも息子が教えてくれたのですが、それはそろそろ幼虫がサナギになる兆候でした。さらにしばらくすると、幼虫は昆虫マットに潜ったまま、顔を出さなくなりました。飼育ケースをよく見てみると、幼虫が昆虫マットの奥底に、自分で部屋のようなもの(蛹室というようです)を作ってじっとしているのが見えました。その蛹室の中で幼虫は飴色の蛹になっていきました。あるサナギには角がありました。オスのカブトムシになることが分かります。こうなると、息子だけではなく、私も、いつ成虫になって出てくるのだろうとワクワクしてきました。
もっとも、幼虫が蛹になり、成虫になる過程はとてもデリケートな時期で、うっかり衝撃を与えてしまったり、触ったりすると死んでしまうとあります。昆虫マットの入れ替えもしてはいけない、と物の本に書いてありました。
そこで、そっとそぉーっと待つことになりました。
やがて、息子が小学校に入学しその世話で慌ただしくなりました。昆虫マットの入れ替えもしなくなったので、半ば幼虫たちのことは忘れかけていた4月の終わり、何やら飼育ケースの中で蠢くものがあるではありませんか!
おそるおそる蓋を開けてみると…、なんと!そこには立派なカブトムシがいるではありませんか!元気に動き回り、ぶんぶん飛び立とうとします。この感動に、私の脳裏には、中島みゆきの「誕生」が巡りました。
その後、次から次へとカブトムシが現れ、結局、オスが7匹、メスが9匹「誕生」したのでした。カブトムシ屋さんに転職しようかと思いました(笑)。
それから、再度、昆虫ゼリーをあげる日々が始まりました。
事務所の中には、やはり息子さんと一緒に幼虫を育てているご家庭があって、めでたく誕生したお互いのカブトムシを交換したりしました。
しかしながら、狭い飼育ケースの中から、広いところに出してあげたい。森の中で、仲間とともに存分に飛び回ってもらいたい。そう思っています。今週末、息子とともに、カブトムシを近くの森に離しに行こうと決めました。
さびしくはありません。なぜなら、飼育ケースの中には、既に次の子供たちが生まれているからです!

