バリアフリーの記

「痛い!」左膝に激痛が走った。テニスコートに立ったまま、身動きが出来ない。頭の中では、素晴らしいバックボレーを返したつもりだったのに、球は後方に転がっていた。医者の診断は「左膝の筋を伸ばしたので、全治3ヶ月」という重傷だった。

それからは、事務所まで自家用車で通勤し、杖をついて歩いた。わずかな段差に足を取られて、何度も転倒しそうになったので、階段は避けてエスカレーターかエレベーターを利用した。

そんな身になって、バリアフリーのありがたさを痛感させられた。鉄道の駅はかなり整備されているが、全く設備のない駅も少なくない。街路には段差が多く、色々の障害物が置かれているので、それを避けるのに大変な苦労をする。広い道路の横断では、途中で赤信号になってしまい、車列の間に取り残される。お年寄りや障害者が急いで渡っても、青信号の時間が絶対的に短すぎるのだ。

良いこともあった。杖をついて立っていると、電車の座席を譲ってくれることが何度かあった。健常者なら断るところだろうが、こちらは怪我人なので、ありがたく座らせてもらった。今年で前期高齢者になったので、お年寄りが立っているのに、シルバーシートで寝たふりをする若者には、怒りを覚えた。

障害者となって、初めて見えてきたことが沢山あった。身体・視覚・聴覚障害者には、バリアフリーは不可欠だ。障害者に優しい社会こそが、全ての人間に優しい社会だ。たとえ障害がなくても、色々な意味で社会的弱者と呼ばれる人たちもいる。それらの人たちの人権が守られる社会が、真の民主主義社会だ。

と、声高に叫ぶ前に、膝の痛みが無くなって、杖がなくても普通に歩けるようになってきた。これはいかん。障害者であったときの気持ちを持ち続けるように、肝に銘じなければならない、と肝に銘じている師走である
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