退所のご挨拶

この度、4年間にわたり在籍しました多摩パブリック法律事務所を退所し、池袋にあります東京パブリック法律事務所(外国人・国際部門)に移籍することになりました。これまで、ご指導ご支援賜りました多くの方々に心より感謝申し上げます。
地域に密着した活動を続ける中で、消費者保護や高齢者の権利擁護、外国人や障がい者、青少年の自立支援等に尽力されている公的機関、民間団体の方々とお会いする機会に恵まれました。最前線で、献身的に活動されておられるこのような方々なくして、人権保障や法の支配は到底達成されない、このことを学び、強く実感した次第です。
今後は、外国人や国際的な問題が絡む案件に多く携わることになります。今後も、公設事務所の一員として、地域の方々と連携協力しながら、日々の業務を通じて、人権保障及び法の支配に寄与できるよう、全力で取り組みたいと考えています。今後ともお力添えのほど、何卒よろしくお願いします。

ハーグ条約

日本人と外国人、または、外国人同士の離婚事件を扱うことがよくあります。中には、子どもの親権や面接交渉が争われる場合も少なくありません。そのような場合,ふと,「相手の親が子を国外へ連れ出した場合はどうしよう」との不安が頭をよぎることがあります。というのも,日本の法律だけでこの問題に対処するのは不可能に近いからです。私が不安になるのですから,お子さんと会えなくなるかもしれない親の不安は尋常ではありません。

 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」は,まさにこのような問題に対処するためにつくられた条約です。ハーグ条約によると,親権ないし監護権を持つ親の下から,子どもが一方的に国外へ連れ出された場合,子どもを奪われた親からの申請さえあれば,子どもを元いた国に戻すことが義務づけられます。つまり,親権ないし監護権を持つ親は,子どもが一方的に国外へ連れ出される心配をしなくてもよくなるのです(もっとも,子どもが元いた国,連れ出された国の双方が条約に加盟していることが前提です)。

 ハーグ条約には,米国,欧州,南米の国々を中心に85カ国が加盟しています。しかし、日本はまだ加盟していません。そのため、国内外から、日本も条約に加盟するよう、強い要請がなされています(外務省によると、2011年現在、日本人(元)配偶者が無断で日本に子どもを連れ帰ったとして外国政府から日本政府に提出されているケースは209件に及ぶとのことです。)。

 本年5月20日、政府は,ハーグ条約の締結へ向けた準備を進める旨の閣議了解をしました。早ければ,来年中にでも、ハーグ条約の加盟国に日本も名を連ねることになるかもしれません。しかし,条約締結については,賛否両論があるのも事実です。外務省が実施したアンケートによると,賛成派からは,「子を連れ去った方が有利という状況を変える必要がある」,「逃げ得がなくなる」などの意見が寄せられています。他方,反対派からは,「外国でのDV被害から避難するため,日本への連れ帰りは最後の手段として必要」などの意見が寄せられています。賛成派の意見はもちろん、外国で元夫からDVを受け、子どもとともに日本に逃れてきた日本人女性が多い現状では、反対派の意見も決して無視するわけにはいきません。

 このようにハーグ条約には様々な側面があり,その加盟により,全ての問題が解決されるとは限りません。しかし,前述のとおり,今の日本には,国境を越えた子どもの奪取についてルールが無いに等しい状況です。条約締結を契機に,ルールをしっかりと定め,それによって生じる新たな問題については,きちんと立法措置を講じることが重要です。その意味で、ハーグ条約の締結は、大きな前進だと考えています。

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多摩パブリック法律事務所

Author:多摩パブリック法律事務所
多摩パブリック法律事務所は、多摩地域の法的ニーズに積極的に応えるため、東京弁護士会の全面的バックアップにより設立された公設事務所です!

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