「重監房」を知っていますか

 頼朝さまが愛したという名湯草津、その湯畑から東へ下ったところ、ハンセン病の患者さん約40人が暮らす国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」の一角に、「重監房資料館」があります。
 ハンセン病は、「らい菌」の感染により惹き起こされる、末梢神経障害と皮膚病変を特徴とする慢性疾患で、筋委縮などによる手指変形や視力喪失まで伴うことがあります。「らい菌」の感染力は弱く、薬剤による早期治療で完治しますが、かつては「不知の病」とされ、らい予防法(1931年)の制定などの国策によって、患者とその家族は隔離されました。その隔離施設が、全国に設けられた療養所(現在は国立13、私立1)でした。国策を背景に、ハンセン病は「遺伝病」「業病」とする偏見に支配されて、「らい撲滅」「無らい県運動」が全国に広がるなど患者・家族への差別は激しいものになっていきます。
 「万病に効く湯治場」と言われた草津温泉では、旧くからハンセン病患者が集まるようになって湯之澤という集落を形成していましたが、1932年、全国2番目の国立療養所「栗生楽泉園」が設置され、10年間で患者家族は隔離されます。
 「栗生楽泉園」に、1938年、「特別病室」という施設が設置されました。「特別病 室」とは名ばかりで、正式裁判はおろか警察の取調べも受けられないまま、全国の隔離施設(療養所)から「不穏分子」の患者が送り込まれる「懲罰房」がその実態でした。再び帰って来ることのない「草津送り」の脅しに、全国の療養所の患者は震え上がったといいます。いつしか、特別病室は「重監房」と呼ばれるようになりました。
 真冬には-10℃にもなる草津で、薄い布団だけしかない「病室」は、四方を高さ4mの壁に囲まれ、明かりは、天井近くの小さな四角い窓から入る光だけ。床近くにある差入れ口から、朝晩に、握り飯1個分の麦飯と薄い味噌汁、梅干1個かたくあん3切れの食事が与えられるだけの「重監房」は、まさに孤独・闇・飢餓・酷寒の四地獄でした。
 1947年に地元新聞に取り上げられたのを機に、「重監房」は社会に知られるようになって廃止されましたが、廃止までの9年間で、収監された93人のうち23人が亡くなっています。
 「重監房」跡地が発掘・復元され、元患者さんの運動の末に、栗生楽泉園の隣に「重監房資料館」が設置されたのは2014年です。
 今、資料館を見学した後、足を延ばして「重監房」跡地に立つと、ここで亡くなった患者たちの無念が重く残っているような感覚に捉われます。そして、「らい隔離」の誤りが明確になってもなお「らい予防法」を存続させ、1996年のらい予防法廃止まで実に40年以上もの間、差別・偏見の根源である「らい予防法」を存続させたこの国の政治に、絶望に近いやり切れなさを感じます。
 草津温泉のお湯に浸かる機会があったら、ぜひ、少しの時間を割いて「重監房」を訪ねてみて下さい。

新年のご挨拶

 昨年は、コロナに始まり、コロナに暮れた1年でした。昨年3月、多摩パブでも、感染拡大の防止策として、事務所の業務時間の短縮を始め、緊急事態宣言が発出された4月から5月半ばにかけては事務所を休業しました。その後、感染防止策を講じた上で、徐々に事務所における業務を再開し、7月にはほぼ従来のペースを回復するまでになりました。この間に、多摩地域の皆様には大変なご迷惑をおかけしながらも、多くのご支援をいただき、厚く御礼を申し上げます。お蔭様で、多摩パブは、2008年の設立の理念としてきた「多摩地域の法的かけ込み寺」の姿を取り戻すことができました。
 都市型公設事務所としての多摩パブは、設立以来13年間、地域の中で法律専門家の手が届きにくかった高齢者・障がい者、子ども、女性など「社会的弱者」と言われる方々に司法サービスを届ける活動に、特に力を入れてきました。しかし、この3年間は、主として人的力量の限界のために、やむなく成年後見等の案件の新たな受任を控えてきたのが実情でした。私たちは、地域に密着した法律事務所として、本来の重要な役割の一つを担えていなかったといっても過言ではありませんでした。そこで、私たちは、一昨年末から、こうした活動の限界を乗り越えるための方策を模索してきた結果、昨年夏以降、新たな成年後見等の案件を受任するべく、所内に後見担当チームを立ち上げました。今年は、この後見担当チームの活動を本格化させ、地域の福祉関係の皆さまの声に、的確にお応えできるようにしていく所存です。
 多摩パブでは、2人の弁護士が退所いたしました。昨年5月末に退所された中嶋靖史弁護士(47期)は、同じ立川で独立して事務所を開設し、12月末退所の加地裕武弁護士(71期)は、三鷹市内の東京さくら法律事務所に移籍しました。両弁護士は、多摩地域のリーガルサービス拡充に熱い想いを抱いて多摩パブの活動を担って下さり、これからも同じ想いの下に、多摩地域で活躍していかれます。地域の皆様には、両弁護士に対して変わらぬご支援をお願い申し上げますとともに、多摩パブにも、これまでにも増して温かいご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

「温泉シリーズ」第2弾


新型コロナウイルス感染拡大の終息が見えてこない中、温泉好きにとっては充たされない日々が続いています。
せめて、温泉の夢を見たくて、これまでに浸かった中で、もう一度行きたい温泉を数え上げていたら、最初に思い浮かんだのが山梨市の「ほったらかし温泉」でした。

この温泉、1999年開業の温泉で、あまり宣伝もしなかったのですが、口コミで広く知られるようになりました。
富士山を遠望し甲府盆地を見下ろす山の中腹にある温泉は、以前から「露天風呂から日の出が見られる」と言われていて、一度は行ってみたいと思っていたところ、8年前の11月の連休に石和温泉に事務所旅行した時、その機会に恵まれました。

1日目の夜、「明日の朝4時半に出発して温泉に行く」と宣言して、朝、玄関に出てみたら、物好きが7人顔を揃えていました。
車2台に分乗して約20分、笛吹川フルーツパークの中を通り過ぎ、山道を上っていくと、目の前にだだっ広い駐車場が広がっていました。
受付の前には、もう、50人余りの行列ができています。前にいる人は「日の出を見たくて午前3時にバイクで東京を出てきた」と言っていました。

この温泉、泉質の異なる「あっちの湯」と「こっちの湯」の2つの温泉があり、2003年に開場した「あっちの湯」の営業時間は「日の出1時間前から夜10時まで」で、「こっちの湯」は朝10時から開きます。
受付を通って建物の中に入るまでに30分以上待ちました。11月の山の夜明け前は、とにかく寒い。

「あっちの湯」の洗い場で、冷え切った体に掛け湯をし、外に出て、暗い中に目を凝らして見ると露天風呂には、黒い塊がいくつもうずくまっています。
露天風呂は、二段に分かれていて、上の木の風呂は熱めで、下の浅い岩風呂は温く、横になって体をお湯に浸けていないと寒い位です。木の風呂の方で「まだ日が出ないかなあ」と呟やく声を聞いて湯気の向こうを見ると、黒い塊は、風呂に浸かっている裸の男たちでした。
岩風呂に寝転んでいると、体が温まって汗が噴き出してきました。そのうちに、雲の間から日の光が見えてきました。
裸の男たちは、揃って朝日の方を向いてボーっとしています。何も纏っていないと、みんな可愛いものです。

「置いてくぞー」と言われて慌てて風呂から上がり、建物から出ると、朝ご飯を提供する外の食堂に20人以上の人が並んでいました。
メニューは、卵かけご飯・納豆とみそ汁だけで、1人前500円。
惹かれるものがありましたが、ホテルの朝食が待っているからと、腕を引っ張られて、その場を後にしました。
この次は、もう少し温かい季節に、平日を狙って行こうと思います。何も考えずに、朝日の方を向いて固まっているのもいいものです。
因みに、日の出を見られるのは「あっちの湯」ですが、「こっちの湯」も絶景に変わりはないそうです。特に夜景は。

ご挨拶

  明けましておめでとうございます。
  多摩パブは、今年で設立満8年になります。この間、私たちは「多摩地域の法的駆け込み寺」を目指して地域に出かけ、折に触れて気軽に相談できる法律事務所の存在をアピールしてきました。その甲斐あってか、最近、法的助言・援助を必要としながら、法律事務所を遠いと感じていた高齢者や障がい者の方々からのご相談が増えています。また、地域の福祉を担当する方々の中には、「困った時には、多摩パブを思い出す。顔を知っている弁護士には連絡しやすい。」と仰って下さる方もいらっしゃいます。
  設立当初から多摩パブが目指したのは、地域の方々との間に「顔の見える関係を作る」ことでした。その方向性に確信を持って、今まで以上に「弁護士を必要としている人がいるところに気軽に出かけていく」多摩パブの活動を強化しようと思っています。
  多摩パブは、この「地域との連携」だけでなく、裁判員裁判を含む困難な刑事事件に取り組む「公的刑事弁護の担い手」、法科大学院と連携した「法曹養成の実務担当」という地域の都市型公設事務所としての任務にも、全力で取り組んでいきます。
  今年もまた、皆さまの一層のご支援とご指導をお願い申し上げます。

新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。

多摩パブリック法律事務所は、今年で、設立満7年を迎えます。
昨年7月、私は、井上章夫前所長の後を受けて、2代目の所長に就任いたしました。

東京弁護士会の全面的バックアップの下に設立された多摩パブは、
市民が気軽に相談できる「多摩地域の法的駆け込み寺」となることを目標にしています。
昨年は、武蔵野・三鷹と府中の2か所で開催された多士業相談会の事務局を担い、
地域の夜間法律相談にも出かけるなど、積極的に地域社会の中に飛び込んで活動してきました。
そうした活動を通じて、
地域の中に「多摩パブ」の名前が定着しつつあると実感するようになりました。

これからも、多摩パブは、地方自治体の福祉の窓口と連携しながら
高齢者・障がい者の方々の後見業務を充実させるなど、
「法的駆け込み寺」の役割を果たしていきます。

また、裁判員裁判を始めとする困難な刑事事件に取り組む「公的刑事弁護の担い手」、
法科大学院と連携した「法曹養成の実務担当」という、あと2つの多摩パブの任務にも、
弁護士と事務局スタッフが一丸となって取り組み、
都市型公設事務所としてさらに成長していきます。

今年も、地域の皆さまの一層のご支援とご指導をお願いいたします。
プロフィール

多摩パブリック法律事務所

Author:多摩パブリック法律事務所
多摩パブリック法律事務所は、多摩地域の法的ニーズに積極的に応えるため、東京弁護士会の全面的バックアップにより設立された公設事務所です!

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